【激増!多重債務】若手青年実業家という詐欺師との貸金バトル——完全無欠の詐欺会社《「街金は見た!」⑪》
【テツクル半生記⑪】あのころ、ぼくは、若かった。
◼︎1ヵ月だけジャンプさせてください!
そして1ヵ月後。利払日。入金がありません。
「あれ? Fさん、どうしたの?」
「ああ、すみません。1ヵ月だけジャンプさせてください」
「何かあった?」
「ちょっと入金が遅れていて。でも、これこれこうで、これとこれが揃うとこことここが入金になります。だから大丈夫です」
完璧です。何の矛盾もありません。お金の計算が苦手な債務者だったら、こんな返事はできません。
「そうか、わかった。大変かもしれないけど、がんばって」
「ありがとうございます。ところで、お時間ありますか? 食事でもどうですか?」
「え。お肉食べたい」
Fさんの会社にはタレントの卵か元タレントかはわかりませんが、きれいな女の子も出入りしていて、彼女たちを連れて広尾のレストランで優雅なひととき。会計は全部Fさん。
「テツクルさんてすごーい!」
きれいな女の子たちにおだてられて、なんていい気分なの。
ただ、ぼくはころんでも街金です。
どんなにいい気分にさせてもらっても、債務者のことを甘やかすわけにはいかない。
支払いが遅れてからは週イチペースでFさんの会社に行って状況確認をします。
「Fさん、これ大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。これこれこういうわけで、これとこれが揃う(以下略)」
完璧です。問題ありません。
「わかった。がんばってね」
だいたい、会社が危なくなってくると従業員が減ってきたり、代わりにガラの悪い人が出入りしだしたり、目に見える変化があるものですが、Fさんの会社にはそういったこともありません。
そしてまた1ヵ月後。利払日。入金がありません。
「また入ってないんだけど」
「すいません、もう1ヵ月だけ待ってもらえますか。そうすれば、これとこれが揃って(以下略)」
「それ前回も聞いてるんだけど」
「どうもタイミングが悪くて」
「ちょっと、そっち行くから話させて」
Fさんは、売掛先から届いた支払いが遅れている理由などが書かれたメールや資料を見せてくれました。不自然なものは見当たらなかったけど、さすがに2ヶ月も遅れるのは何かあるはず。
ぼくは、知り合いの広告代理店の社員に、Fさんから預かった大手企業が発行した発注書のコピーを渡し、裏取りをしてもらいました。
「テツクルさん、こんなの発注したことないそうです。あと、押されてる印鑑も偽造だって言ってましたよ」
これは? これは? と次々Fさんから預かった書類の裏取りをさせましたが、全部偽造書類。
おそらく、通帳にあった有名企業からの入金も、自作自演だったんでしょう。自分のお金を有名企業の名で自分の口座に振り込む。
Fさんがぼく以外の街金や個人投資家から借金をしているのは把握していました。こうなったら、誰よりも先に回収しなければなりません。
(つづく)
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